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He's Dreamin' in the Moon

『月読の夢』 
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眠れぬ夜の世迷言


 先日のチャットネタです。
 吸血鬼な藤堂さんと食糧なルルーシュ。
 原作設定で行きます。

 一応藤ルルと言い張りたいところですが…正直微妙です。
 しかも管理人、コレがルル初書きだったりします。
 (ギ/ア/スはシュナクロ・ジェレクロを某様に書かされた以外、読むの専門だったんですよね…。)

 それでもOKな方、以下よりどうぞ。






【眠れぬ夜の世迷言】




「限界だ」

 焼け付くような視線に促され、ルルーシュは小さく頷いた。

「後で部屋に行く」
「もう待てない」

 進路を塞がれ、KMFを操る屈強な手で捕らえられる。
 抵抗する間もなく抱え上げられ、ルルーシュの口から狼狽しきった悲鳴が漏れる。

「っ! 藤堂!!」

 暴挙を制止すべく顔を上げると、バイザー越しに藤堂の表情が目に入る。
 飢えて、餓えて、それでも理性を手放せないが故の、焦燥。
 そんな顔を見せられては、脳裏で組み立てた非難の言葉が喉元で凍りついてしまう。
 ルルーシュは黙って、ただ逞しい肩にぎりぎりと指を食い込ませた。




 藤堂鏡志朗は普通の人間ではない。
 能力や体格も非凡だが、それとは全く違う次元で他者と一線を画している。
 藤堂は種族として『人間』ではないのだ。

 ルルーシュがそれを知ったのは、8年前。日本での事だった。

 陽炎の立ちのぼる夏の日。
 人気のない竹林。
 鳩の屍肉に食らい付き、赤黒い血を啜る藤堂。
 精悍な顔を自己嫌悪に染め上げた藤堂が、その時は怖くてならなかった。

 唯一の『信じられる大人』が何故あんな事をしていたのか。それが知りたくて、時間を縫っては藤堂の動向を探るようになった。
 そして掴んだ幾つかの情報。
 藤堂は人前で食事をしない。四聖剣や部下達から、頻繁に惣菜類の差し入れを受け取っているが、どれも手を付けずに誰かに譲るか、捨てるかしている。
 三日に一度ほどの頻度で、切羽詰った様子で鳩や猫を連れて竹林に入り、戻ってきた時には心なしか余裕を取り戻している。連れていた筈の動物は、毎度いなくなっていた。
 時折、食い入るように他人の首筋を見つめている。まるで獲物を狙う虎のように飢えた目で。

 結論が出たのは、再度『食事』の現場に出くわしたときだった。

 藤堂鏡志朗は、血を糧に生きている

 理由は分からないが、藤堂は生物の血以外のものを摂取しても、生きていけない体なのだろう。
 そんな自分を厭い、それでも本能に逆らえず生き血を啜る。

 不思議と嫌悪は覚えなかった。
 藤堂の葛藤を哀れに思いこそすれ、蔑視する事はできなかった。  
 だから、ルルーシュは全てを見なかった事にしたのだ。
 
 しかし。

 ゼロとして藤堂を必要としたその時。
 奇跡を起こした責任を説く自分を、藤堂の目が物欲しげに見ていると気付いた瞬間。
 悪魔も裸足で逃げ出す謀略を、思いついてしまったのだ。

 


 もはや見慣れた藤堂の私室。
 扉に錠をかけるや否や、節の太い指が首周りの布地をほどいていく。
 顕わになった白い首に、鋭い歯が突きたてられた。

「っ!」
 
 じん、と痺れるような痛みに全身が強張る。
 反射的に身じろぎしようとする身体を、藤堂は圧倒的な力で壁へと押さえ込んだ。
 よほど空腹だったのだろう。いつにも増して性急な藤堂に、ルルーシュは仮面の下で満足げに微笑んだ。

(それでいい。もっと、もっと、夢中になれ、藤堂)

 ここは緑豊かな日本の地とは違う。
 藤堂の食事はゼロしかない。
 機械に囲まれ戦う事を選ぶ限り、藤堂はゼロに頼らざるを得ないのだ。

 くつり。
 笑いを喉の奥で噛み殺し、ルルーシュは聖母もかくや、優しい手付きで、自分に覆い被さる広い背中を撫で摩った。
 藤堂の動きが止まる。
 つい、と首から鎖骨へ、鮮血が一筋流れ落ちる。
 空腹感が少しは落ち着いたのか、赤い雫を追う藤堂の目に、もはや焦燥の色はない。
 焦燥に代わって、黒い絶望がルルーシュを見据えている。
 真っ当な道を行けない己が身を呪う、声なき叫びが聞こえる。

 人の道を行こうと足掻き、誰よりも高潔な生き様を見せる『人外』と、修羅の道を行くと決意し、人道など気にもかけない『人間』。
 『人間』は『人外』の力を欲し、『人外』は『人間』に命を求める。
 
(まったくもって、皮肉なことだ)

 首元を離れた唇が、鎖骨に添えられる。温かい舌に舐め上げられて、悪寒にも似た悦楽が脊髄を駆け抜けた。
 一滴たりとも零さぬ、とでも言うかのように、丹念に拭われていく赤い命。

 藤堂を生かしているのが、他でもない自分自身だという実感に、どうしようもなく溺れそうになる。
 藤堂にとっては只の食事に過ぎぬ行為だと分かっていても、そこに特別な何かを求めてしまいそうになる。
 
 零れ落ちた滴りを拭い終えると、藤堂は再び首の傷に歯を当てた。

 ぬぷり

 音を立てて滑り込んでくる、硬い異物。
 傷口にぴたりと嵌る感覚に、ルルーシュはうっとりと目を閉じた。








<後記>
 …何コレ、な話になってしまいました。リハビリ一作目でございます。
 最近よくお邪魔するチャット会で浮上した『藤堂さん吸血鬼ネタ』を形にしてみました。
 ルルが吸血鬼はよく見るけど、藤堂さんだって吸血鬼の衣装(黒マント黒装束)似合いそうだなー、なんて話してた筈なのに、出来上がったのがコレ…。
 もうちょっとロリショタっぽくしたかったなぁ。
 最後が尻切れトンボなのは、管理人の妄想力が限界を迎えた故です。ご容赦下さい(汗)。

 お茶会に参加しておられた方、及び藤ルル好きーな方に限り、お持ち帰りOKです。
 こんなんで宜しければ、存分に愛でてやって下さいませ。





 


  








  
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こんばんは。
こんばんは。椎名紀伊です。
チャット会ではお世話になりました~。
ぜひぜひ、またお話させてくださいね(おそらく、真っ先に寝てしまうと思いますが/笑)

こんなに早く吸血鬼藤堂を拝見できるなんて!
なんだか、思わずぞっとしてしまいました。
怖いですよ、吸血鬼藤堂……。
ルルが吸血鬼より、藤堂が吸血鬼の方が怖い気がしますよ!
というより、jokerさんの情景描写が怖過ぎです!
こう、なんだか二人とも病んでますねぇ。
この設定のまま突き進んで……果たして幸せになれるんでしょうか?
バッドエンドしか思いつきませんよ(笑)
続きとか期待しつつ……ご馳走様でした!

これ、ホントに持って帰っちゃっていいんですか?
ホントに頂いちゃいますよ?(笑)
代わりと言ってはなんですが、うちのルル鍋と機械愛なスザクをお土産に……(誰も要らないって/笑)

これからも執筆、頑張ってください。
それでは、失礼します。
椎名紀伊 URL 2008/09/08(Mon)22:37:49 編集
Re:こんばんは。
早速のコメントありがとうございます。

怖い、ですか。そうですよね、やっぱり(汗)。
これでも最初は可愛い話目指してた筈なんですが…改めて自分はギャグかドシリアスしか書けないんだと思い知らされました(涙)。
紀伊さまのお話みたいな、可愛い話が書きたいものです。
いつかきっと…!

拍手ネタ、喜んで頂きます!!
本館の引越しが終わりましたら、頂き物ページに飾らせて頂きますね♪

コメントありがとうございました!
またお茶会でお会いしましょう!!
【2008/09/08 23:21】
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